人生とは
ぼくは今、自分の生き方がわからなくなっている。
これからずっと、一生一緒に生きると思っていた人と別れたからだ。
あの人とは、10年間一緒にいた。これから先もずっと一緒だと思ってた。
4月に別れを告げられ、荷物が徐々になくなっていき、5月に正式に別れた。
19歳で出会い、26歳で結婚し、29歳で離婚した。子供はいなかった。
思えば、自己の価値観を形成する最も大事な10年間をお互いがお互いのために生きていた。
大学生と言えば、友達と夜まで延々と飲み明かしたり、男同士で夜遊びをする人が多いと思う。でも、ぼくはそうしたことはほとんどしてこなかった。
バイトで稼いだお金の大半は、あの人との旅行やデートに費やした。
週末は必ずデートに行った。
二人でたくさんの思い出を作ってきた。
夏休みや冬休みは、3日に一度は会っていた。とにかく、常に一緒にいた。
傍から見たら、いわゆるバカップルだったと思う。
あの人が隣で笑ってくれるだけで、幸せだった。
関係がぎくしゃくしてきたのは、大学を卒業する辺りからだった。
あの人は大学を卒業後、企業に就職したが、僕は大学院に進んだ。
新しい環境に進むことに対し、不安定になったあの人は、こんなぼくを頼ってくれた。
でも、ぼくはあの人の環境や精神的不安を理解してあげられず、突き放してしまった。
ぼくは、あの人が社会人になるときのメッセージとして、「お互い環境は変わるけど、それぞれ頑張ろう」というメールを送った。
あの人は、それに大きなショックを受けた。あの人は、「それぞれ」ではなく、「一緒に」頑張ろうと言ってほしかったんだ。
それでも関係は続いた。
ぼくは大学院の研究が将来につながると信じ、自分なりにバランスを取って歩んでいたつもりだった。
ぼくの通っていた大学院は、土曜もあり、いわゆるブラックだった。
バイトをする時間もなくなり、だんだんお金と時間の余裕がなくなっていた。
あの人が新入社員として働きだした5月、
新入社員研修の泊り先から、寂しいと電話をかけてきてくれた。
その日、たまたまぼくは、研究で大きなミスをした。研究活動の終わりとさえ思えた重大なミスだった。
そんな精神状態のぼくは、頼られるキャパがなかった。
「新入社員なんだから、同期のみんなと楽しみなよ」と言ってしまった。
あの人は泣いた。号泣して謝ってきた。
ぼくはまた、自分で精一杯になり、あの人を大きく突き放し、傷つけた。